あふれるほどの愛を君に
すぐ側でチッと舌打ちの音がしたのは、朝礼直後のことだった。
見れば、めずらしく気難しい顔で立っている鈴木さんがいて、その大きな目で、ある方向を凝視し呟いたんだ。
「アイツっ ─」
驚いたような、少し腹を立てているようにも聞こえる声だった。
「どうかしました?」
声をかけても気づかない。
不思議に思い鈴木さんの視線を辿るとそこには、自ら他のスタッフへ積極的に声をかけている黒木さんの姿があった。
そして僕はふと、その後ろ姿に目を止めた。
長身の広い背中を見て、誰かに似ていると感じたから。