あふれるほどの愛を君に
そんな思いを巡らせながら僕は再度、黒木さんがいる方へ視線を動かした。
そして、そこに彼女がいないことを確認し、心の中でそっと胸を撫で下ろしたんだ。
なんの根拠もないけど、でも無意識に生まれた感情に思わず苦笑する。
── 何を心配してんのかな……。
「阿久津、どうした?」
鈴木さんの声に我に返る。
「なんか俺、余裕ないなって思って……」
「うん?」
「いえ、なんでもないです。9時からミーティングでしたね。さ、準備しましょー」
机に戻って資料を揃えていると、斜め前の机から声をかけられた。
「阿久津君、これ持ってた?」
顔を上げると、身を乗り出し、こちらを覗き込んでいるサクラさんと目があった。