あふれるほどの愛を君に

「もしかして阿久津君、あまり乗り気じゃないとか?」


いつの間にか隣にサクラさんが立っていた。

ふくみ笑いを隠したイタズラな表情で僕を見つめている。


「いいえ、そんなことないですよ。面白そうじゃないですか」


シレっと答えて見つめ返すと、クスッと笑った彼女が「そうね、頑張ろうね」と小声で言った。


僕はこの会社に入り、物作りの面白さを知った。

商品企画課はその第一段階を担う部署だから、一から悩んで決めた物がやがて形になって商品化されると嬉しい……っていうより感動するんだ。

それにサクラさんと一緒にその喜びを味わえるんだから、やっぱり幸せで、余計にやりがいが持てるんだよね。


「うん。一緒に頑張ろうね」


コツンと小指と小指が微かに触れた。
そして僕達は、こっそりと笑顔を交わし合った。



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