あふれるほどの愛を君に
「泊まってかないの?」
「着替え、持ってきてないもの」
「それならいまから取りに行こ?」
そう言って、一層ぎゅっと抱きしめようとしたら
「またそうやって誘惑するんだから」
とサクラさんは、僕の思惑等お見通しだと言わんばかりに腕の内からするりと抜け出した。
そして向かい合って「この小悪魔!」なんて、悪戯に笑って言ったんだ。
「商品企画課の阿久津君はウブでカワイくて、虫も殺さないような顔してるって、他部署のお姉様方から評判よ」
「そんなの聞いた事ないよ」
拗ねるみたいな言い方で答えた僕は、サクラさんの左手をとる。
「それはハルが鈍感だからよ」
「鈍感って、ヒドいなー」
そして、そのまま自分の口もとへ運んで。
「じゃあ、なんで小悪魔か説明してよ?」
じいっと見つめたまま、細く可愛らしい小指に音を立てキスをした。