あふれるほどの愛を君に
会社に戻ったのは定時を一時間近く過ぎた頃だった。
同じチームの人間はほとんどが帰社した後で、今日一日の疲れを感じながら机に鞄を置く。
ふぅっと息をついて顔を上げ、何気なく右斜め前の席を覗き見た。
まだ片付いていないサクラさんの席。
彼女と同じBチームのメンバーの机上も同様で、 僕は机の引き出しから小銭を取り出しそのまま部屋を出た。
向かった先は、自販機が設置してある小さな休憩スペース。
軽く握った手の内の小銭を鳴らしながら、その奥にある部屋の中をそっと伺った。
そこは、廊下に面した壁の一部がガラス張りになっていて。
以前までは空き部屋で鍵が掛けられていたが、最近は少人数でミーティングをする時などに使われていた。