あふれるほどの愛を君に

サクラさんのことを考えていたら、心なしかさっきより体が軽くなった気がした。

歩きながら胸ポケットを探りスマホを取り出して──



「阿久津君」


歩く速度を落とし、もう少し静かな場所を探そうとした時だった。

僕の名を呼んだその明るい声に、ゆっくりと振り返る。


「……星野」

「やっぱり阿久津君だ。久しぶりぃー」


懐かしい丸顔が目の前でほころんだ。


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