あふれるほどの愛を君に
駅ビルの近くの小さな喫茶店に二人で入った。
「こんなとこで会うなんて、すっごい偶然だね」
元クラスメイトの彼女が、あの頃と変わらない笑顔を僕に向ける。
「阿久津君は仕事で来たの?」
「日帰り出張でね」
「へえー。スーツ、なかなか似合ってるね」
瞳を細め人懐っこく表情を緩める彼女につられて、僕も笑った。
彼女は、星野 光希(ほしの みつき)。
高校の同級生で、それから友達の元彼女。
親戚の結婚式で北海道に来たという星野は、帰りの飛行機も偶然、僕と一緒だった。
「え。間違って最終便とったの?」
「だってネット予約、初めてだったんだもん」
「相変わらずだな、星野のそういうとこ」
「ちょっとぉ、それどういう意味!?」
明るい色のショートヘアを揺らして、星野がまた笑う。
『一人っきりでどうやって時間をつぶそうか困ってたの』
さっき再会した時、苦笑いを浮かべてそう言われた。
三年ぶりに会って懐かしかったし、まずは何処かで話そうという彼女の提案に僕は黙って頷いたんだ。