あふれるほどの愛を君に
「阿久津君、雰囲気変わったね」
「そうかな」
「うん、大人っぽくなったみたい。いい感じだよ」
苦笑いを返すと、両手でティーカップを持った星野がフフっと笑った。
同じクラスになったのは三年の一年間のみ。だけど僕等は、入学した直後からよく顔を合わせ話もした。
小中学校が一緒だった親友の吉川 岳瑠(ヨシカワ タケル)が、合格発表の時に一目惚れした相手が星野で、入学式の日に告白をして、そして二人はその後すぐに付き合いだしたんだ……卒業式の前日まで。
「タケルとは連絡とりあってるの?」
変わらず笑顔のまま、だけど遠慮がちに尋ねられた。
「たまに、かな。あいつ忙しそうだし」
教員を目指して宮城の大学に進んだ吉川は、今年の正月にも帰ってこなかった。
「そっか……。もう四年生だもんね」
呟くようにそう言って、テーブル脇のランプシェードを見つめる。
ステンドグラス越しの柔らかなオレンジ色の光がぼんやりと星野の顔を照らし、その横顔があの頃の面影と重なって見えた。