あふれるほどの愛を君に
飛行機の時間を変更することは忘れたわけじゃなかったけど、その気はほとんど失せていた。
星野に提案してもよかったんだけど、楽しげに話す彼女に言いだせなかったのかもしれない。
すっかり冷めてしまった二杯目のコーヒーを飲み干して店を出た僕達は、それから近くの居酒屋で夕食と少しだけのお酒を飲んで予定通り最終便に搭乗した。
「そういえば阿久津君、携帯の番号変わったでしょ?」
「あー……途中、手離してた時期もあったから」
そんな会話を交わしたのは、空港に着いてリムジンバスに乗り込む列に並んだ時のこと。
「そっか……。ね、新しい番号教えて?」
「いいよ」
夜はすっかり更けていて、星の綺麗な日だった。
それから、それぞれの帰路へ着くため「またね」と笑顔を交わして、その日は別れた。