あふれるほどの愛を君に
「起きた?」
その声に視線を向けると、階段を登りきったばかりの彼女が顔をのぞかせていた。
「おはよ。いま何時?」
「えっと、もうすぐ9時になるかな」
「え。もう、そんな時間!?」
慌てて上半身を起こした。だけど、
「休みなんだからいいじゃない」
歩いてきて僕の肩に手を触れたサクラさんに優しく押され、再びベッドに体を沈めた。
「疲れたでしょ?」
窓辺に立った彼女がカーテンを引く。
その後ろから開放された光が飛びこんできて、僕は目を細めた。
「でもサクラさんと眠ったら、疲れなんて吹っ飛んじゃった」
そう言葉にして真っ直ぐに見つめると、数秒の沈黙が生まれて。見開かれた瞳の下の頬がピンク色に染まって見えた。
「またそんなこと言って、ホントにハルって小悪魔なんだから」
「だって嘘じゃないよ」
そして僕はベッドの横に立った彼女へ腕を伸ばし、華奢な手首を掴んで隣へ引きこんだ。
勢いよく倒れこんできた体を受け止める。
「ただいま」
「おかえり」
ギュッと後ろから抱きしめて腕の中へ閉じこめる。
首筋に鼻先を埋めると、いつもの甘く柔らかな香りと心地いい体温を感じた。