あふれるほどの愛を君に
「阿久津君って、お酒、結構飲めるんだね」
三度目のおかわりを頼んだ直後、目の前に座る星野が言った。
「え。あー……意外、とか?」
「うん。ちょっと」
そしてクスクスと笑う。
「あっ、ごめんね。別に面白くて笑ったんじゃないの。なんかね、みんな大人になったんだなって。それが嬉しいような、でも寂しいような……って、わたし変なこと言ってるね。おかしいな、ウーロン茶で酔っちゃったかな」
そう言ってまた苦笑いをもらした星野だけど、僕は彼女の言おうとしたことがわかるような気がした。
「あのさ、」
「なに?」
ふと思いだしたのは、この前札幌で会った帰りに星野が言いかけてやめた会話のことだった。
あの続きは、なんだったんだろうって……でも、言いよどんだ星野の顔を思い浮かべて、僕もまた口ごもった。
話さなかったのは話したくなかったから、だろうから……だから。
「俺の誕生日なんて、よく覚えてたなって思って」
違う話題を持ちだした。