『リナリア』~生徒に恋した体育教師~
「え?あ、野菜?これは~・・・そう、来夢が切ったんだよ!」
「へぇ~すごいじゃないか。なかなかやるな」
俺が曽根元にそう言った瞬間、松本才華が口を挿んだ。
「なにいってんの、来夢!それ切ったの、妃菜じゃん」
冷ややかな松本の目線。
奥では、少し悲しそうな顔をした妃菜の姿が目に入った。
曽根元は、まずいって表情をした後、ごまかすように笑った。
「えへへへ・・・バレちゃったぁ。先生、ごめんね♪」
俺は曽根元からそっと離れて、目を見ていった。
「どんな小さなことだって嘘はいけないぞ、曽根元。俺は嘘は嫌いだ。必ず人を巻き込むからな。これからは気をつけろよ?」
「あ・・ごめんなさい」
曽根元は俺のもとから離れていった。
嘘ってだけでも、いい気分はしないのに。
あいつに・・ちょっと嫌な思いさせちゃったな。
でも、こんなに野菜をキレイに切れるなんて、さすが。
いい奥さんになれるよ。