『リナリア』~生徒に恋した体育教師~
「俺さ、正直今まで怖かったんだ。女の人と向き合うの。俺とだったら幸せになれないって言われるのがきっと怖かったんだ。」
「え・・・・?どうして、幸大さんがそんなこと思うの・・?こんなに完璧でかっこいいのに・・」
蓮見先生は不思議そうな表情をして言った。
「それ。“完璧でかっこいい”って、ありがたいことに、よくそう言ってもらえるんだけど。その言葉が案外プレッシャーでさ。俺は完璧なんかじゃないし、かっこよくなんかない。だけど、俺に告白してくれる女性は、俺の悪い部分だったり嫌な部分とか見ようとなんてしてくれないだろ?目の前にいる俺のことしか見てない。俺、自信がなかったんだ。」
俺がそう言うと、蓮見先生は俺の手を握りこう言った。
「そんなことない。あなたはかっこいい人よ。私ずっと見てきたんだもん。だから自分に自信がないなんて言わないで・・」
俺は握られた手をそっと離した。
「ありがとう。でも、そんな時、俺は相川妃菜に出会ったんだ。彼女は俺が何も言わなくても傍にいてくれた。俺が心から辛いとき、何も言わずに支えてくれた。ニコって笑うその笑顔に何度も救われた。あいつは俺のダメな所も良い所も全部ひっくるめて俺を見てくれてたんだ・・・。あいつは生徒だって、何度自分にセーブをかけようとしても、あいつに向かう気持ちが止められなかった。これが好きって事なんだって、俺、初めて知ったんだ。」
俺は改めて、蓮見先生の目を見つめた。