『リナリア』~生徒に恋した体育教師~
「あれっ・・・・・・・・」
その時、舞い散る桜の中から、ある一人の生徒が登校してくるのが見えた。
その子は俺に気が付くと、ニコっと優しく微笑んだ。
「妃菜・・・・・」
この笑顔。3年前の入学式に、俺が一目ぼれした笑顔。
きっとあの瞬間から、運命は決まってんだ。
俺が彼女に恋をすることを。
「先生、おはようございます」
「おう、おはよう!相川君!」
村上先生は元気に妃菜に声を掛けたけど、俺は・・・声が出なかった。
寂しい、とかそういう気持ちじゃなくて。
あまりに妃菜がキレイだったから・・・・・恥ずかしくなってきたんだ。
「ん?なに固まってんの?・・・・・見とれすぎ」
“見とれすぎ”のところだけ、耳元でつぶやく村上先生。
その言葉で俺は我に返った。
「はぁ!なに言ってんすか!!?あっ・・・おはよう・・・。相川」
「ふふ♪なに二人でじゃれあってるんですか?じゃあ、またね、先生たち」
相川はそう言って、校舎の中へ入って行った。