『リナリア』~生徒に恋した体育教師~
「どーせ俺は一緒に過ごす女性なんていませんよっ。あ、村上先生、一緒に過ごします?」
なんて冗談を言ってみる。
「う~ん、クリスマスにイケメンと一緒に過ごせることはとっても光栄だ。だがしかし。俺には奥さんと彩人くんがいる・・!!!すまん!!イケメン!!」
彩人(あやと)くんとは、昨年生まれたばかりの村上先生のかわいい息子さん。
こう返事が返ってくることは分かってはいたものの・・やっぱり幸せそうな村上先生を見ると、ちょっぴり羨ましく思う。
「分かってますよ!今年は初めての家族3人でのクリスマスですね。」
「そうなんだよ~!もう彩人がいるだけで、家のなかが明るいんだよね!穂波先生・・いいよ、結婚も、子供も。早く僕に追いつきなさい」
そう言って村上先生は、俺の肩に手をポン、と置く。
「結婚ですか~・・正直、全然ピンとこないっすね。そんなにいいもんですかね?」
「当たり前だろ~。好きな人とずっと一緒にいれるんだぞ?こんなに幸せなこと他にある?ま、穂波先生も本当に好きな人が出来たらわかるよ。それに、君は俺にちょっと似てるところがあるからね。気になるね~、君の行動が。」
村上先生は、そう名言を言い残し、授業へといってしまった。
本当に好きな人・・・・。
そう言われて、相川の顔が浮かんだ・・・。
あ~ダメダメ。
あいつは俺なんか相手にしてないよ。
俺は教師、あいつを正しい道へと導いていかなきゃいけない立場なんだ。
そう自分に言い聞かせた。