my existence sense-神が人を愛す時-
零章
崩れ落ちた空の破片が降り注ぐ。
まるで鏡を砕いたかのようにそれらは美しい青を映したままに大地に注ぐ。
美しいものが音を立てて壊れる。
美しいものは壊れるその時でさえ美しかった。
世界が終わる。
誰もがそう思った。
........そう思い崩れ去った空を見上げる"人"がまだこの世界には存在した。
ゴオォオッ。
轟音が世界の隅々に駆け巡る。
生きとし生きる全ての者に世界が終わることを告げるように。
「ようやく終わる.......。
これで本当に、終わることが出来るのね」
終わり。
世界の終わり。
轟音鳴り止まぬ世界の片隅で一人の女がそう溢す。
絶望的なはずの世界の終わり。
......それなのに、彼女は笑っていた。
穏やかにそして安らかに、全てを慈しむように金色のそれはそれは美しい瞳に世界を映して。
.........。ッ。
一人で立ち尽くしていた大地の上。
彼女が降り注ぐ空にスッと手を伸ばす。
「..........。ッ。」
手を伸ばした。
そんな彼女はふと何かを感じて視線を空から逸らしフッと振り返り見る。
........。
するとそこには"人"の姿。
何人もの何人もの"人"が遠く大地の向こうに見えた。
辺りには轟音が響き渡り何も聞こえない。
だけれどその"人"達は何か言っているようだった。
遠くに見えたその"人"は彼女の元へとやって来ようとする。
だがその距離は"人"にはあまりにも遠くて轟く大地の上では思いようには進めない。
大地の揺さぶりに押し返されては進みを繰り返し少しずつ彼女の元へと進む。
轟音に掻き消され届くことはないというのにその"人"は叫び続ける。
必死に懸命に、彼女を求めるように叫ぶ。
ッ。
「もう.......時間だわ」
彼女はそんな"人"に自ら歩み寄ろうとはせず、ただただ見つめ哀しそうに笑った。
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