my existence sense-神が人を愛す時-









この世界に在る一番大きな大陸。
それは巨大な大陸で世界の半分程を占める。



生きる国が違えば肌の色が違う。
服装が違う習慣が違う。そして種族が違う。

この世界に生きるのは何も人間だけではない。
生きる土地に合ったそれぞれの種族が居る。



とある水底の国では地上の空気とは違う水の中でも自在に動き回れるように地を歩く為の足を水を掻き分け進む為の尾びれに変えた人魚達が。
とある砂漠に囲まれた国では巻き上がる砂嵐に負けぬように強靭な竜の鱗を持った騎士達が。
とある鉱山の奥地、宝石の美しい煌めきを纏いひっそりと佇む国にはその煌めきの魅力に惹き付けられた精霊達が。
とある一年中絶え間なく雨が降りやまぬ麗しい緑に囲まれた静かな森の国には静寂を好む妖精達が。

だが比率は圧倒的に人が多く世界の大半を占めている。
人は神から授かった特別な力は無く一見無力でちっぽけな種族であるが、彼等は長い歴史の上で地道に築かれた英知によって様々な武器や他の種族の持たない革新的な技術を進歩させこの世界で今最も強い勢力となった。

人は元々尾びれなど持たぬ種族で膨大な水に阻まれればそれを渡ることは出来なかったが、彼等は船というものを考え生み出しそれを可能にした。
そして人は翼も持たぬ種族で空を自由に飛び交うことは出来なかったが、彼等は飛行艇というものを生み出して空をも凌駕した。

何も出来ぬはずだった人。
その進歩は誰もが予想出来なかった程に著しかった。


そんな人の国。
人という膨大な種族を一つに統べる国。








「.......僕は戦は嫌いだよ。
だから戦はしたくない。

でもどうかな?
相手の出方によったらもしかしたら結果そうなってしまうかもしれないけれど.....でもそうならないかもしれないし、うーん」




此処に会すはそんな国の軍人。
部隊を率いる程の腕を持つ将軍格。

......。
そしてそんな彼等よりも更に高い位置、この国の中で一番上に立つ男。
つまりは王。
人の頂点。人を統べる王。









「ったく......お前の言い方ってのは何でいつもそう回りくどいんだよ。
簡潔に言えよ、簡潔に!
つまり俺達に何をやれって話だ?あ?」




キルファを、王を前にその部下であるジーザスが言う。

その言葉遣いに敬意など微塵も無い。
本来ならばあるまじき事であるはずだが、この二人の間柄には身分を越える何かがあるらしい。
まぁ、元々キルファはそういうことを気にして罰するような傲慢な王では無いのだけれど。










「あはは、そうだね。
ごめんごめん。

えっとつまり、君達に御願いしたいのはね僕の理想の世界を現実にするために皆を率いて動いて欲しいんだ。
そのために新たに特別に軍を組織する。
君達に力になってもらいたいんだ」




屈託のない子供のような無垢な笑みを見せるキルファ。

きっとこの笑顔に裏は無い。
彼はきっと純粋に彼の中に在る理想を夢見て、ただただ純粋にそれを叶えたいと思っているだけ。
ただ純粋に"御願い"をしているだけ。







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