my existence sense-神が人を愛す時-
軽い笑みも茶化す調子も無く真面目な声だった。
キルファへと向ける視線は睨んでいる訳では無いが鋭い光を帯びていて、慣れない者であれば怯んでしまいそうなそんな視線。
そしてその眼光には鋭いだけでは無く、何処か試すような光も帯びている。
彼らしくない。
そんな風に言えば失礼になるかもしれないが、こんな彼の真剣な様子を見ることが出来るのは本当に滅多にある事で無い。
.........。
ジーザスの言葉。
真っ直ぐで鋭く試すような視線。
横に居るバロンはそのいつもとは違う彼の様子に思わず息を飲み黙り、対するキルファはそれに怯みはせず自分に向けられる視線にしっかりと目を合わせて答える。
「僕はこの国の皆が大好きだよ。だからこの国を掻き乱す気も民を困らせたりする気も無い。
最悪な時代だった。
皆人という同じ種族なのに国が違うというだけで殺し奪い合う。
ある国では強欲な王が己の欲のために民を犠牲にした。またある国では民達が己の命と大切な者を守るために慣れない武器を取り戦へ赴き命を落とした。
いつも犠牲になるのは民で王や上に立つ者達は安全な場所で指示をして兵を駒のように動かし使い捨てるだけだった。
.........。
そんな醜い争いを終わらせた父は偉大だよ、尊敬すべき存在だ」
この世界、人の支配する国と神が支配する国がある。
神が支配する国は信仰する神ごとにそれぞれ確立しそれを守る種族が代々国を繋いでいる。
それに対して人の国は何時の世も不安定で常に国が分裂し乱立し一つに纏まることが無かった。
その為に人の国の間では争いが絶えずに長い間戦争が続いていた。
土地を奪い合い資源を奪い合い、思想の違いから相手を敵視し殺し合う。
それを何十年何百年と繰り返してきた。
同じ種族であるのに。同じ人であるのに。
愚かな戦乱の時代だった。
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