my existence sense-神が人を愛す時-











ッ。

集められた兵の中に見慣れぬ影。
それも一つ二つではない、全体の半数を占めるのではないかという程の数。

服装、髪の色、瞳の色。
手にしている武器や鎧に施された紋章は様々。
何れも此処ノヴェリア王国のものではない。



それは先刻の戦争や各地で起こる小さな争い、そんな時の記憶の中にうっすら残るものと重なる。
それは戦いの相手、敵国である兵達に見覚えのある紋章ばかり。
王都。国の中枢。
こんな場所では決して見ることは無かったであろう者達の姿がそこには溢れていた。


顔を合わす兵達。
戦場でしか会わないはずの敵の姿。
........。
だが戦いが始まることは無かった。
当人達も知らぬ間に最早敵ですら無くなっていた。








"我等は同盟を成した!
平和の為に手を取り合うこととした"



先代王はこの数年の間に敵対する近隣の国に自ら赴き交渉と話し合いを重ね、水面下で同志を増やしていた。

地道に努力を重ねた。
ノヴェリア王国の軍事力であれば小さな国であれば捻り潰すことも不可能ではない。
軍事力に物を云わせて本気で攻め入りでもすれば一溜まりもないだろう。

だが目の前には平和を求めるその姿勢を真っ直ぐに訴える大国の王。
民を動揺させ不安がらせることの無いように御忍びで直々に相手の国に出向くその誠実な姿に多くの国がノヴェリア王国に集った。



その同盟の輪は広がり近隣国ばかりでなく遠くの小国も巻き込み世界中の人の国に広まる。
世界に在る人の国のそれこそ殆どがこの同盟で一つになった。



だが全ての国を束ねるには及ばなかった。
ノヴェリア王国と並ぶもう一つの大国アルザスとそのアルザスに従属する数国が首を縦に振ることは無かったのだ。

アルザスはこの世界に存在する人の国で最も歴史が深い国。
ノヴェリア王国程では無いが軍事力もかなりあり、それだけでなく技術や知識の面でも発達した由緒ある国でプライドが高く自分の国が一番であるという頑なな考えを持っており常に他国を見下してきた国だった。

それ故に自国よりも下と位置付けているノヴェリアからの指図など受けるものかと話さえ聞かずに門前払いした。
それどころかこの先代王の行動をアルザスは自国を滅ぼすための準備と判断、その行動を宣戦布告と受け取り戦争の準備を進め始めたのだ。









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