my existence sense-神が人を愛す時-
先代王は本当ならばこのまま全ての国と同盟を交わし、戦争無くして人の国を一つにしたかった。
だけれどそれは叶わぬと判り、このような結果に至ったのである。
結果的には戦争に至ってしまった。
だが先代王のしたことは無意味では無かった。
これまで幾つもの国に分裂し纏まりの無かった人という種族が、ノヴェリア王国という大きな旗の下に集い大きな一つの括りとなった。
そうなったことにより、人という種族の分裂は二分になりそして今その二つの勢力がぶつかることにより一つになろうとしている。
今までの人の歴史からすれば大きな進歩である。
手を取り合ったノヴェリア王国を中心とする多くの同盟国軍とそれに抗ったアルザスと数国ばかりのその従属国軍。
規模の違いは明らかだった。
だがそれ以上にそれぞれの国の纏まりと連携、そして平和を本気で望み目指す者達の士気の差が勝敗を決した。
たった一年と少し。
この戦争はノヴェリア王国とその同盟国の大勝という形で終結し、我を張り続け抗ったアルザスという大国とその従属国は敗戦した。
敗戦したアルザスの王は最後まで他国の元に下るのを嫌い自害。
同盟を成した小国達は形を地方都市に改めてノヴェリア王国の旗元にその名の下に各自政治を行うことにした。
立ち振舞いは各々であったが敗戦国もノヴェリア王国の元に治まり遂に"人"の国は統一。
この世界の歴史に新ノヴェリア王国の名を深く刻み込んだ。
「父の偉業で人という種族は一つになった。
まだこの現実を受け入れられずに抵抗しようとする一部の輩も居るけれど、こうしてノヴェリア王国という大きな括りで人々は纏まり人同士の無駄な戦争は無くなった。
今の世界は前に比べてずっと素敵だ、僕は父を偉大に思うよ」
「だったらよぉ、何でその素敵な今を壊そうとする?」
「別に壊そうだなんて思っていないよ。
僕は考えたんだ、父の意志を継ぎ世界をもっと平和にもっと素敵にするその手立てを」
「.............それが神殺しだっていうのか?
んな物騒なこと、お前はどうして平和に繋がると思う?」
間髪入れないジーザス。
彼らしくない真面目な面持ちのまま真っ直ぐにキルファに視線を向ける。
明確に否定する言葉は出さないが、言葉にも視線にも明らかに否定の意が込められていた。
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