my existence sense-神が人を愛す時-








鉛色の淀んだ空に光。

眩い光。
死にかけた世界に息を吹き返させるように光が崩れ落ちた淀んだ空の隙間から溢れ出す。

その光は辺りを侵食し、やがて世界を包み込んでいく。





ッ。

その眩さに視界は真っ白に。
世界は白い光に支配され、人はそんな中でただただ立ち尽くす。














.........。

そしと光はやがて引いていく。
真っ白になった視界は次第に色を取り戻して再び世界を映し出す。

世界は、人は救われた。
一度終わりを迎えた世界にまた始まりの時が訪れる。
ただ違うのは、もうこの世界には彼女が居ないということ。



創世の女神の手により生まれた世界。
女神と四人の神々により築き上げられた世界。
女神の手を離れ一人歩きを始めた世界。
そして自らの手を離れ人が凌駕するようになった世界。

その全ての世界を見てきた女神は―――彼女はもう居ない。














ッ。



人は始まりを迎えた新たな世界を見上げて彼女の名を叫んだ。

彼女の偉大さを知り、泣いた。
彼女の存在が、神の存在が人にとってどれだけ大切なものであったかを知った。

........。
女神がどれほどまでに自分達を、人を愛していてくれたことを知った。



人々の涙は枯れた地に落ち世界を潤す。
その潤いで目を覚ましたように木々の緑が一斉に芽吹く。
それを合図に世界中に生気が満ち溢れる。

まるで奇跡のようだった。
人はこれが女神からの最後の贈り物だと悟りまた泣いた。







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