my existence sense-神が人を愛す時-
石ころが彼女の行き先を阻むように立っていた行き止まりの壁に転がっていく。
ッ........。
あぁ、この石も彼女と同じようにこの壁に行く手を阻まれて止まるのか。
彼女はその石ころの行き先を見届けぬままクルリと身を翻そうとする。
............。
だが、何か違和感を感じて彼女は翻しかけた身体をもう一度捻り戻す。
石ころが、無い。
転がってあの壁にぶつかり止まるはずのあの石ころが無い。
手にする灯りを近付けては探してみる。
だけれどやはり無い。
感じる違和感。
特に意識を向けていなかったので定かではないが、確か石ころが壁にぶつかるような音もしていなかったような気がする。
ジリッ。
恐る恐る壁ににじり寄り満遍なく灯りで照らし出してみる。
..........。
ザラザラとしていそうな岩肌が剥き出しの壁。
何の変哲も無い壁。
........。
ッ。
手で触れようとするが何だか怖くなって寸前で止める。
「もう..........よーし、えいっ!」
カッ。
だがどうにかこの違和感の正体を確かめたい。
彼女は足元に灯りを置いてその辺に転がる石ころの一つを掴んで意を決したように壁に向き合い仁王立ちする。
そして片足を上げて身を捻り何故か無駄に良い構えで思いっきり石ころを投げ付ける。
ッ。
手元を離れる石ころ。
暴投して何処かに行くこと無く真っ直ぐに壁へと向かっていく。
石ころが壁にぶつかるまであと紙一枚分程の距離。
―――――、グニャリ。
「!!?」
石ころは壁にぶつかることはなかった。
当たるか当たらないかその瞬間、壁で行き止まりであるはずの空間が捻り曲がったようにグニャリと歪む。
.........。
そして彼女が放った石ころはその空間に食われるように飲み込まれてその先に消えていった。
彼女は、驚愕のあまり数秒間静止した。
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