my existence sense-神が人を愛す時-









「........ッ...た.....」



それからワナワナと震え出す彼女の肩。







バッ!




「来た来た来た来たぁあっ!
これぞまさにお宝の匂い!んふふ、やっぱりあたしのこの勘と嗅覚は間違っていなかったのね!」



誰も居ない空間に響く歓喜の叫び。
興奮に震える肩に爛々と輝き出す目。

彼女の頭の中には"お宝"という彼女が最も愛するその文字だけ。




ダッ!
歓喜の叫びの余韻がまだ濃く残ったまま、彼女はその余韻を背に駆け出す。

向かうは壁。
だが彼女の勢いは壁に向かうような勢いではない。恐れや躊躇いは微塵も無い。
もしも先程の現象が目の錯覚であってこの壁が本当の壁であるならば、彼女はド派手に壁に激突してしまうだろう。












「お宝ちゃぁぁあんっ♪」




ッ...........フッ。



壁にぶつかると同時に放たれた彼女の声は、空間に響くことなく壁の向こう側に消えていった。

シンッ。
静まり返ったその場所、壁に阻まれた行き止まりの空間に彼女の姿はもう無かった。















............。
ブワッ。



壁を通り抜ける。
その瞬間、明らかに空気の質が変わったきがした。

先程にも増して静まり返った空間。
周りは先程と同じような岩肌剥き出しの壁が迫り立つ。
そこは変わらず真っ暗なはずだった。
先程手にしていた灯りは壁の向こう側に置いてきてしまった為此処には無い。
それなのに何故だろう、周りの情景が彼女の目にははっきり映る。

取り敢えず、先程とは何処か違う空間。
不思議......神聖。とにかく異質だ。





ッ。
すり抜けてきたはずの壁を振り返ってみれば、普通の壁に戻っていた。
触れてみる。
すると先程のようには歪まずにひんやりとした岩の感触が指先を伝わる。


..........。
帰りもちゃんと通り抜けることが出来るだろうか?
それとも他に抜け道でもあるのだろうか?

フッと不安に駆られたが、まぁどうにかなるだろうと能天気な彼女は再び壁を背に向ける。










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