my existence sense-神が人を愛す時-











バタンッ。

試験官である将校が受験者達を残して闘技場を後にする。
閉じる扉の音に一瞬シンッと静まり返る闘技場の中。
先程までの試験の張り詰めた空気の余韻か、なかなか誰も言葉を発しようとはしない。









.........。
カランッ。

そんな静かすぎる空間。
誰一人として言葉を発せず動こうともしないそんな空間で一人、全くその空気を感じていないように早々とこの闘技場を後をしようとする者が居た。




ッ。
他の者には全く見向きもせずに手にしていた剣を元にあった場所に立てかけ直し、護身用に付けていた試験用の古びた鎧を床へと置く。

脱いだ鎧の下からその人物の姿が露わになる。
........。
かと思われたが、その人は鎧の下に着るにはそぐわない外套のようなものを身に纏っており頭はフードをすっぽり被っており顔もよく見えなかった。



そんな一人だけ外れたその人物に闘技場に残る受験者達の視線が一身に注がれる。

明らかに他の者とは違う異質な雰囲気。
誰もがその雰囲気に飲まれ声を掛けることは出来ない。






ッ。





「.........お先に」



そんなことを気にも止めず、支度を終えたその人は待つよう指示された別室へと移動すべく闘技場を後にする。

ガチャンッ。
そう言う声の後、その人は扉の向こうへと消えていく。











「...........」



空間にはまた沈黙。
その人が残した異質な雰囲気を感じ皆で互いに目を合わせた。










「今のあいつ.......徒者じゃあねぇよな」



暫くの無言沈黙の末に一人がようやく口を開く。
第一声。
徒者じゃない。
それはこの場の誰もが感じたことだった。








「........。
だよな。あの雰囲気だけじゃない、戦いの腕剣の腕もだ」



「あぁ。
あいつの試合、結果は全勝......それどころかたった一度の攻撃さえ食らっていなかった。
俺は相手に当たってねぇから分からねぇが、ありゃ普通じゃねぇ」








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