my existence sense-神が人を愛す時-
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世界には今日も穏やかな時が流れていた。
鳥達は優雅に青く広がる空に舞い飛び、街には人々が行き交う足音と話す声が飛び交う。

時刻は昼下がり。
女達は世間話に花を咲かせ、子供達は無邪気に駆け回り笑う。





穏やかすぎる日常。
平和な世界。

諍いなどが全く存在しないかと言えば嘘になる。
だけれど人は皆、今の世界は平和であると言う。


..........。
今まさに世界の何処かで平和を翻す一歩が踏み出されようとしていることも知らないで。




















「やぁ、忙しいところをすまないね?
よく集まってくれたね、二人共」




穏やかで平和な時が流れる世界の一角。

空を舞う鳥達の囀りも街角に溢れる喧騒も届かない。
いやに静寂で何処か緊張感が漂う。


とある国のとある一室。

空間に穏やかな声を響かせる物腰柔らかにフッと笑みを見せる一人の若い男。
そしてその男に呼び出されたであろう二つの影。










「全くだぜ、こんな忙しい時にわざわざ呼びつけて何の用だよ?
折角これから酒場のアリアちゃんと魅惑のランデブーだって言うのによー」



微妙な緊張感が流れる空間に穏やかに響く男の声。
その声の余韻がまだ残る空間に今度は違う全く緊張感の無い男の声が重なる。








「はぁ.......また女ですか。
本当に貴方は女性関係にだらしないですね、ジーザス」



「何だよ、バロン。
そういうお前だって城の侍女達誑かしてよろしくやってんじゃねぇのか?」




「なっ!
僕は女性を誑かすような真似はしません!

僕の場合は何もしなくても女性が勝手に寄ってくるだけです。
隙さえ在れば街へナンパをしに行っている貴方と一緒にするのは止めて下さい」




ジーザスと呼ばれた緊張感の無い男の言葉に、バロンと呼ばれた男が丁寧で冷静な言葉で返す。



二人の男。

ジーザスは赤茶色癖毛の長い襟足を後ろ一つに結い、金色の少しだけ吊り上がった瞳をヘラリと歪ませ笑う。
対してバロンはサラリと流れるような淡い金色の長い髪を少しだけ揺らし、鮮やかな紅色の瞳に呆れの色を浮かべる。


そのどちらもが長身でそのどちらもが同じ深緑色の軍服を身に纏っていた。







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