my existence sense-神が人を愛す時-
歓迎されても困る。
まぁ、そうなってくれればジーザスの女癖の悪さも少しは治るかもしれない。
だがそれで男癖が悪くなってもそれはそれで困るが。
「彼女は逸材だよ。
僕が彼女から感じ取ったものは正しかった。
今日の試験じゃ、世界中から集まった屈強な先鋭達に彼女は負け無し。
誰一人彼女に一撃として与えられた者は居なかったよ」
「大袈裟。
勝ったと言っても数十人の中での話よ?
それに所詮は試験、本番とは全く違う」
嬉しそうに話すキルファに至極落ち着き払ったまま冷静にノウェルは返す。
「ですが、今日行われた試験は各地の試験で優秀な成績を納めた強者ばかりのはず。
それに各小国共にこの戦での自分達の立場を上げようと腕に自信のある者を今回の試験に送り込んできていると聞きますから、今回集まった者達の戦闘能力というのはかなりのものですよ?
そんな中で負け無し........些か信じられないことですね」
「そう......ならば試してみる?」
ッ。
「え......」
ッ。
試してみる?
バロンの言葉にそう返したノウェル。
試す。
瞬く間、その意味を理解出来ずに聞き返そうとする彼の首筋にヒヤリと冷たい感覚。金属の感触。
............。
聞き返そうと声に出し掛けた言葉が吐息に変わる。
何が起きたのか分からずにバロンの頭は一瞬真っ白になった。
そんな中でも武人として身体だけは無意識に反応して腰に手をやる。
本当ならばそこには剣の柄があるはずだが、今は帯剣しておらずその手は空を掴む。
「............フンッ、なかなかだな」
笑いを帯びたメリルの声で真っ白になった頭に今自分の置かれた状況が一気に流れ込む。
前に居たはずのノウェルの姿は無く、今まで全く感じなかった背後からジワジワと感じてくる彼女の気配。
首筋にはすぐ傍のテーブルの上に置かれていたはずの料理用のナイフの刃が寸止めされている。
振り返るだけの動作でもその刃は皮膚を裂きそうなので目だけでバロンは彼女を振り返り見る。