my existence sense-神が人を愛す時-









「くっそ、お前みたいな猫被り似非紳士優男が居るからみんなそれにコロッと騙されて.......」



「騙されてとは何ですか!
だいたい僕は猫被りでも似非でもありません!」



「全くよぉ、お前なんかより俺の方がずっとダンディーでワイルドでそれで居てマイルドな魅力があるのに。
それが判らないのかねぇ、世の中の女っていうのは。

でもまぁいい!
今の俺には酒場のアリアちゃんが―――!」




「.......そういえば、そのアリアという娘もこの前僕を訊ねて城までやってきましたよ」



「な、何!?
そ、それ本当か!?」



「えぇ。
手作りの焼き菓子などを持って来てお付き合いして欲しいと僕に迫っていらっしゃったのですが.......貴方が好意を持っている娘でしたか。
じゃあ断っておいて正解でしたね。

丁度あまり僕の好みではありませんでしたし。
僕はもっとしとやかで品のある女性らしい女性が好みですから」



「な、何ぃいっ!?」





話が盛大に脱線してきた。
........。
というよりもそれ以前に彼等が此処に呼び出された理由である本題はまだ始まってすらいない。

そもそも会話を続けるこの二人は呼びつけられた側であって、本来ならば二人の会話に完全に置いて行かれているキルファの話を聞く側であるのだけれど。










「おのれ......こうなったらとても口では言えないような過去のお前の訝しい女性遍歴を紐解いて――――」



「っ!
べ、別に僕にはそんな遍歴なんかっ!」



「おっ!その慌て様だと本当に人には言えないようなあんなことやこんなことがある感じだな?
これは国の全勢力を上げて突き止める必要が―――」



「っ!!
そ、そ、そんな無駄なことに全勢力上げないで下さい!」





続く続く二人の世界。
肝心のキルファはすっかり傍観者で、彼自身も本題を忘れて会話に聞き入っている始末である。

これじゃあ、このままこんな調子でいつまでも続いていつまで経っても本題に入れないということも十分に有り得そうだ。







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