my existence sense-神が人を愛す時-
............。
「あんたはどう思う?
今回のこの招兵について............神殺しについて」
暫くの間を置いてノウェルが静かに尋ねた。
「どうって............逆に尋ねても良いですか?
貴女は、ノウェルさんはどう考えますか?」
どう思うか。
ノウェルの漠然とした問いにバロンも同じように漠然と問い返す。
「............これを機にまたこの世界で争いが始まる。
それだけは確かな事だと思うわ 」
「ということは、貴女は反対だと?」
「いいえ、そうとも言えない。
今例え起こさなくとも何れは必ず起こる戦いだと思うから。
その時期が先の未来ではなく今になったということなだけ。
そういうあんたはどう思う?
主君の命であるからだとかは関係無くあんたの意思は」
............。
「正直判りません。
賛成か反対かということ以前に今僕達がしようとしていることが正しいのか間違いなのかも」
「あんたはそんな自分でも判らないことをしようとしているのか?
こんな先頭に立って民を人を、世界を導こうとしているのか?
それは無責任だとは思わないのか?」
「......すみません」
「いいや、別に責めている訳では無いの。
ただ私は知りたいだけ。
あんたが............いや今此処に居る私達が導こうとしている未来は、人にとって世界にとって正しいものなのか。
私達が導こうとしている未来は私達が今からやろうとしていることはーーー神殺しは人の総意であるのか」
熱くなる訳でも冷める訳でも無く淡々と言うノウェルのその声は、ひんやりとした夜の空気に溶け込み消える。
ッ。
彼女の薄い金色の瞳は揺らぎもせずにバロンを見つめて答えを促す。
............。
「総意であるかは判りません。
きっと神を殺すということに反対の意を唱える人も少なからず居るでしょう。
......。
ですがキルファさんが平和という文字を掲げて人へと呼び掛けて僕達を始め多くの者達がキルファさんが掲げたその旗の元に集まった。
神殺しというまるで現実味の帯びない戯言に現実を、未来を感じさせるまでの多くの人が。
そんな今の現状を僕は人の、世界の総意と捉えます」
ッ。
「............神を殺すことが、その為に起こるこれからの戦いが世界の平和な未来を勝ち取るために踏まなければならない過程であると僕は信じます」