my existence sense-神が人を愛す時-
フワッ。
夜風が二人の頬を撫でる。
それ以上ノウェルは何も語りはせず黙り込み、バロンも何も言わずにそのまま隣で暫らく佇んだ。
「うぇーい!
............おぉっ?ぬうおぉっ!な、な、なバロンお前俺の女神なノウェルちゃんとそんなところで何してやがるぅ?!」
「......一番面倒な人がやってきました」
二人の間に流れていた静かな空間が背後から聞こえてきたいやにテンションの高い男の声によって盛大に崩れ去る。
声の主は振り返らなくても分かる。
分かるからこそバロンは疲れたように溜息を落として顔をしかめた。
「ちょっと目を離したら抜け駆けしやがって!このむっつり破廉恥猫被り変態似非紳士がっ!」
「ジーザスさん、変な呼び名を増やさないで下さい!誤解を招くでしょう?!」
「ノウェルちゃぁん、このむっつり破廉恥......以下省略なバロンに何かされなかった?」
「何かとは、何?」
「こんな夜空の下に二人っきりといえば、あーんなことやこーんなこと............うおぉおっ!羨ましいぜぇえっ!」
「?
バロン、この男は何を言っている?私にはよく理解出来ない」
「理解しなくていいんです、ノウェルさん。
放って置くのが一番です、この人の阿呆な言動は伝染しますから」
静かな夜の乱入者ジーザスの言葉にノウェルは本当に何も分からないと言ったように不思議そうに首を傾げ、その隣でバロンは呆れたように言葉を返した。
「またそんな扱い......ひどぉい、バロン様ったら!」
「また口調がアマレットさんになってます!
......ジーザスさん、まさか貴方本当にその気が...........」
「あぁら?今私の事呼んだかしら?
やぁだ、私の居ないところで三人で楽しそうに......もうっ、アマレット拗ねちゃう」
「っ!ア、アマレットさん!
い、い、いえ!気のせいです気のせいです!
ほ、ほらノウェルさんもジーザスさんも戻りましょうか?まだ料理もお酒も残っているみたいですから」
騒がしくなったバロン達の様子に気が付いてアマレットも葡萄酒片手に彼等の元へ集まる。
先程から相当な量を飲んでいたが全然顔にも出てなくかなり酒が強いことが伺える。
最早片手に揺れる葡萄酒がただの水のようにも見えた。