my existence sense-神が人を愛す時-
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人が大いなる一歩を踏み出そうとしていた。

一見何時もと変わらない世界。
だが世界が密かに騒めいているのをひしひしと感じる者達が居た。















「サハラ様............」



湿り気の無いカラリと渇き切った空気。
目には見えないような細かい砂埃がその渇いた空気の中で群れを成して全体を黄土色に濁す。
植物らしい植物も見当たらない。
水の気配は無いに等しい程遠い。

生き物が生きて行くには向いていないように思える地。どこまでも広がる砂漠。

......。
だがその地に根を張り暮らす者達が居た。








「お前も感じるか、この世界の嘆きを」



初めに聞こえた声よりも低い荘厳な声。
サハラと呼ばれた男の声。





「サハラ様、我々は一体これからどうすればーーー」


「狼狽えるな。
案ずることはない。彼等にこの世界は変えられぬ」



サハラ。
その名はこの世界に生きるものであれば知らない者は居ない。
広大な世界のほんの一部、辺境の地であるこの場所に存在しながらその名は世界の隅々に浸透している。


神。五神。
創世の女神に力を分け与えられし者のその一人。

創世の女神ノウェリスにサハラ、ジーナ、ネモフィラ、リヴァイア。そしてエルドレ。
だが事実上今のこの世界を直接的に動かしているのはジーナとネモフィラ、リヴァイア、そしてこのサハラだけ。

創世の女神ノウェリスはある出来事をきっかけに世界の表側からは姿を消し今は何処か世界の片隅で眠りについていると聞く。
そして残るもう一人、五神の一人であるエルドレは......。









「だが彼等をこのまま放っておく訳にはいかない。
野放しにしておけば世紀末が訪れるだろう............我等が同胞の起こしたあの二度目の世紀末以来の三度目の世紀末が。

三度目の世紀末の先にこの世界の未来は無い」







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