my existence sense-神が人を愛す時-








「先ずは情報が必要だ。
各地に密使を飛ばせ、街の用心も怠るな」


「仰せのままに」



ッ。

サハラに深く一礼する影は巻き起こる風と共に濁り霞んだ空に消える。
その風によって辺りに立ち込めていた砂埃が振り払われて霞んでいたサハラの姿が露わになっていく。



その姿は荘厳な声とは裏腹にまだそう歳を重ねていないだろう青年。

砂漠の厳しい太陽の光を跳ね返してしまうような白に近い色素の薄い髪。砂漠の砂嵐をその中に映したような荒々しさの残る砂色の瞳。
青年。
だがオーラは明らかにその見た目を、いや人を超越している。








......。




「............また世界が大きく動き出そうとしておりますーーーノウェリス様」



自分以外誰も居なくなったその場所でそう言葉を落とし砂色の瞳を伏せる。
もう遠く会っていない、神である彼の中の唯一無二の神に思いを馳せて。彼女を思って。

落とされた言葉は悲しく渇いた空気に紛れ消えた。








「人の数は今や膨大なもの、それに彼等も彼等なりに進化を遂げてその力は最早我等神をも脅かす。
数、力、そしてこの時代の流れ、勢い。全てを踏まえればこちらが劣勢だろう。

だがもしも我等滅び行く運命だとしても......迎え討とう」



伏せた瞳が再び開かれる。

見開かれたその瞳は渇いた砂の大地のそのまた向こうを見つめていた。
この大地の向こうで世界を翻すような大きな狼煙を上げる人の姿を見据えていた。

強い瞳で。哀しい瞳で。









ーーーッ。

バッと未だうっすらと砂に霞む天に手を翳す。





ゴオォオッ......ブワッ!

すると遠くから唐突に響き出す轟音。
そして、何処からともなく近づいて来る巨大な影。
巨大な何かの影に翳る地面。
霞む空気にはっきりとした姿は見えないが、それでも認識出来るのはゴツゴツと骨張った大きな翼と一枚一枚が重なり合い鎧のようになっている鱗を纏った身体。そして鈍く光る鋭い鉤爪。






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