my existence sense-神が人を愛す時-
竜だった。
まるでこの世のものとは思えないほど凛と美しく気高い一匹の飛竜だった。
ッ。
サハラの目の前へと舞い降りる竜。
竜はサハラの砂色の瞳を前にスッと跪いた。
気高き竜が跪くは固い忠誠の証。真に心を通わせその命をも預けることの出来る相手にしか従わぬ。
「我等も行くぞ」
跪く竜の鱗をそっと撫でるように触れる。
竜は嘶きサハラはその背に飛び乗る。
瞬く間。
サハラを乗せた竜は乾き切った砂漠の空に飛び立つ。まさに風を切るような力強い羽ばたきであっという間に空の果てまで飛び上がる。
一体何処へと向かうというのか。
竜はサハラを乗せたまま一度空の遥か高くまで飛び上がりそれから一直線に風に乗りながら砂漠の空を降下する。
砂の混じった空気を掻き分け、浮かぶ蜃気楼に惑わされることなく向かった先。
そこには、巨大な砂の柱が聳え立っていた。
砂の柱。
正確には砂漠の砂を巻き上げ渦巻く風の柱。巨大な砂嵐。
......。
ただ普通でないのはその砂の柱は右往左往砂漠を漂いはせずにひたすらに同じ場所で渦巻き続けているということ。
その場所から微動だにせずその場に聳え立ち続けているということ。
......。
まるで外から来る何かを威嚇し拒むように。
渦巻く風で何かを守るように。
ゴオォォオッ。
物凄い轟音と凄まじい勢いの風で普通の者では近くに寄ることすら敵わない程。
だが、サハラを乗せた竜はその強靭な翼で風を振り払いその砂の柱に近づいて行く。
ゴオォォオッ。
取り巻く轟音と風。そんな中をサハラと竜は行く。
近付く程に風は不思議と彼等を避けるようにして次第に彼等を砂の柱の内側に取り込んで行く。
それはまるで砂の柱に食べられているようにも見えた。
ゴオォォンッ......フッ。