my existence sense-神が人を愛す時-
砂と風に取り込まれサハラを乗せた竜はその砂の柱の内側へと抜けた。
抜けた瞬間、先程まで取り巻いていた轟音と風の激しさは止み極めて穏やかな世界に変わる。
まるで別世界。
そんな先程まるで違う世界の真ん中で彼等は地面へと舞い降りる。
「ご苦労」
スタンッ。
竜の背から軽やかに飛び降りるサハラ。
舞い降りた地面から微かに砂埃が舞う。
サハラを背から降ろした竜はグルルと喉を鳴らして深く一礼する。
バサッバサッ!
そして徐に鱗に覆われた大きな翼を二三度羽ばたかせやがて人の形へと、一人の男へとその姿を変えていく。
「......行きましょう、サハラ様。
皆が貴方を待っております」
「あぁ」
促されサハラは目だけで頷き何処かへと向かう。
砂埃で霞むその先。
うっすらと見えてくるのは街の輪郭。
こんなところに街があるなんて。
周りを砂の壁に囲われて外の世界から隔離されたこの場所に。
サハラの都。またの名を砂塵の都。
この世界では此処をそう呼ぶ。
文字の通り砂の塵に塗れた都で到底普通の人では暮らすことが難しいような過酷な環境に置かれた国。
「っ!
お戻りになられましたか!サハラ様!」
「ご無事のお戻り何よりで御座います」
だが此処が都と呼ばれる以上、誰も暮らしていないはずはない。
街の中に入るとそのサハラの存在に気が付いた者達が続々と跪く。
その者達の姿はこの世界で通常人と呼ばれるものとは少々異なる。
同じような人型ではあるが、その皮膚には竜の鱗のようなものがあり額からは角張った角が生えている。
人と竜の狭間のような姿。