my existence sense-神が人を愛す時-
「......」
そんな民達を横目にサハラは街の中を進む。
砂色一色の何処か味気なくも感じる街並みを擦り抜けて向かうのは長く続く真っ直ぐ一本伸びた道の向こうの一際大きな建造物。
煌びやかな装飾などは一切無いが、柱や壁には美しく精巧な文様が彫り込まれ見る者の言葉を奪う荘厳な雰囲気を醸す。
神殿。
そこは神を祀る場所。
そしてこの国の信仰の対象である彼の、五神の一人であるサハラの在るべき場所。
ッ。
「今戻ったぞ」
「.........」
返ってくる言葉は無い。
神殿は限られた者しか立ち入れぬ聖域。
この場所の主であるサハラとあと一人だけ。
その一人は神に直接仕える者。神官。
それは神から直々に認められ任された者にしか与えられぬ称号で、他の信者とは一線を画す存在だった。
一人の神に通常は一人の神官が仕える。
多少の例外はあるものの、それはこのサハラだけではなく今この世界に存在する五神達全てがそのような形を取りそれぞれの国を治めていた。
「......長い旅路でお疲れのことでしょう。
少しお休みになられますか?」
静まり返る神殿の中。
サハラの背後から声を掛ける者。
それは、先ほど竜に姿を変えてサハラを此処まで運び連れてきたあの男。
「いや、その必要は無い。
一刻も早く次の手立てに移らねば」
「それでは私は謁見の儀の準備を」
「あぁ、早急に取り掛かれ」
「御意」
スタッ。
サハラの言葉に男は深く一礼をし素早く身を翻し自らのすべき事へと取り掛かる。