my existence sense-神が人を愛す時-
「......待て、ラグナス」
ッ。
「如何なさいました?サハラ様」
身を翻し神殿を後にしようとする男ーーーラグナスと呼ばれた男は主人の声にすかさず向き直り跪く。
その拍子に揺れる髪。
その隙間から覗く肌にはこの砂塵の都の住民達と同じ様な竜のような鱗。そして頭にはスッと美しく伸びる角が見えた。
「集めるのは限られた者達だけでいい。
この今のまだ不確かであやふやな状況で無駄な混乱を不安を与えたくは無い」
「......仰せのままに」
ッ。
ラグラスはサハラの民を思う意を汲み取りもう一度深く一礼をする。
そしてまたサッとその身を翻して今度こそ神殿を後にした。
広々とした神殿にまたサハラ一人きりになる。
耳がキンッとなるような荘厳な静寂感。
サハラはその空間の一部になるように溶け込み静寂さに身を委ねる。
「.........。
さぁ戦が始まる」
静けさの中でそう呟き言葉を落とす。
戦。
何も無い虚空を見つめるサハラの淡い瞳の中にはこれから起こるであろう世界を三度目の世紀末に導くかもしれない近い未来の光景が映し出されるのだった。