tender dragon Ⅱ
「全員に納得してもらえるまで謝るって言ってたんだ、希龍。」
思い出してみれば、あの日あの子は希龍くんといたのに笑ってなかった。
「他の女は納得してくれたみたいだけど、土屋由佳だけは何度謝っても納得しなかった。」
希龍くんはあの日カフェで、あの子に別れ話をしてたんだろう。
でも納得してもらえなかった。
「春斗が退院したあの日、はっきり"好きな子ができたから別れよう"ってメールを送ったらしい。」
それであの子は……
「希龍があの日飛び出していったのは、難波から、土屋由佳が飛び降りたって連絡が来たからなんだ。」
あのときの希龍くんの焦った顔を思い出す。
あたしや春斗の声を無視して走っていった彼はそんなに苦しい思いを……
「今は土屋由佳の意識も回復してる。」
「だったら何で…」
希龍くんは帰ってこないの?
「まだ分かんねぇ。」