tender dragon Ⅱ
まだ着いていませんように。そう願いながら靴に履き替えて足早に正門へと近づく。
そして正門の近くに集まる女の子の数を見て、思わず立ち止まってしまった。
「うそ…」
それはきっと、門の壁に寄りかかってる男の子を見るための人だかり。
…遅かった…
少し小柄な茶髪の男の子。西高の制服を着ていて、見覚えのある童顔な彼は……
「春斗…」
春斗はまだあたしの姿には気づいてなくて、集まってる女の子たちには目もくれない。
…下を向いてればいけるかな…
少し伸びた髪の毛で必死に顔を隠して、あまり不自然になりすぎないように少しだけ下を向いた。
集まってる女の子たちの間をバレないように静かに歩いて進む。
「あれって春斗くんだよねっ」
「やっぱりかっこいい!」
「話しかけてみなよっ」
騒ぐ女の子たちは春斗のことを話してる。改めて実感した。春斗がモテるってこと。
まぁ、顔整ってるもんね。
優しいし、なんか犬みたいで可愛いし。母性本能をくすぐられるっていうか、あたしにとっては弟みたいなもの。