tender dragon Ⅱ
「あ……」
思い出させるように浮かんだのは、あのカフェで見た女の子の横顔。
思わず漏れてしまった声のせいで、蒼空くんも前にいた女の子の存在に気づいてしまった。
一瞬で顔が険しくなる。
やっぱり…
「…土屋由佳…」
あぁ、やっぱりあの子だ。
顔をあげた女の子が、鋭い目であたしを睨み付ける。
敵意を表に出すように。
「川原美波さんですよね。」
彼女はハッキリそう言った。
「…そうだけど」
たまたま会ったわけじゃなさそう。
顔に残った傷が、足に巻かれたギプスが、どのくらい大きな怪我だったのかを物語ってる。
あのときカフェで見た、可愛らしい、幼かった彼女はいない。
あたしを睨み付ける目も、言葉も、全てがあたしに向けられた敵意。
「話があるんです。」
あんたには負けない、そう言われてるみたいでゾッとした。