tender dragon Ⅱ

「…知らない、辛そうな顔なんてしてないもん。あたしといて、楽しそうだもん。」

何を言っても伝わらない。

「無理なんてしてない。」

分かっているはずなのに、まるで聞く耳を持ってくれない。


「あんたなんかに絶対渡さない。」

そう言うと彼女は、ベンチに立てかけていた松葉杖を乱暴に掴んだ。


「言っとくけど、秀太にも会わせないから。」

難波くんの意思は関係なく、あたしは会わせてもらえないらしい。


「それは難波くんが決めることだよ。」

「会わせないって言ってんじゃん!!」

立ち上がってまたあたしを睨み付ける。

初対面の人にこんなに嫌われたのは、あたしが生きてきた中で初めてだった。


「絶対負けないんだから…っ」

小さく呟いた土屋由佳。

そのまま立ち去ろうとするから

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