tender dragon Ⅱ
もう学校が終わって何十分も経ってるのに、難波くんの姿は見えない。
春斗は優しいから、あたしが落ち込まないようにああ言ってくれたのかもしれないけど、もういないのかもしれない。
「春斗、やっぱりもう…」
帰ろう。
そう言おうとした口を、急いで閉じた。
「来ましたね。」
友達に囲まれて歩いてくる難波くん。
やっぱり彼は中心にいて、みんなに同じように向ける笑顔が目立っていた。
喋ることに夢中でこっちには気づいてない。
中学の時から、いつでも話しかけてくれるのは難波くんからだった。
だから彼がこっちに気づいていない状況で話しかけに行くのは、今さらだけど緊張するし、勇気のいること。
歩き出す勇気をくれたのは、春斗。
迷っていたあたしの背中をポンッと押して、笑顔で「頑張ってください」なんて言うから、頑張らないわけにはいかなくなった。
「難波くん…っ」