tender dragon Ⅱ
「美波さん龍泉のお姫様じゃないっすか。」
龍泉の、お姫様…?
あたしがお姫様?
「何それ!」
あたしの知らないところで、噂が一人歩きしてる。否定する余地もないわけだ。
「龍泉が特別扱いする女ですからね、美波さんすっかり有名人ですよ。」
いつもみたいに無邪気に笑ってるけど、笑い事じゃないからね、春斗。
どうりで、街歩いてるとジロジロ見られるし、学校でもコソコソ言われるはずだよ。
色々あったから、みんなそのことについて言ってるんだと思ってた。だからすぐに収まるはずだって。
…思ってたのと全く違う。
「いいじゃないですか、お姫様。」
「やめてよ、あたしお姫様なんかじゃない。」
もうあたしは守られなきゃならない存在じゃないんだから。
「美波さんは龍泉にとってのお姫様ですよ、これからもずっと。」
立ち止まって、振り返った。
「……だから、戻ってきてくれませんか…?」
急に小さくなった声。