tender dragon Ⅱ

「何で…」

先に声を出したのは、相手の方だった。


あたしを見て驚いて、入口に立ったまま動けないでいる彼。

それは紛れもなく、あたしがずっと会いたかった人。


「美波…」

あたしの名前を呼ぶ優しい声。


「きりゅ…くん…っ」

久しぶりに目が合った。

声が聞けた。

それだけで嬉しくて、涙が出そうになる。


だけど彼は、あたしから目を反らす。

「…何しに来たの?」

土屋由佳のベッドの方に歩きながらそう言う。


ねぇ、あたしに言ったの?

"何しに来たの"って。

あなたを助けに来たんだよ。

そうやって辛そうな顔するから。隠しきれてない作り笑いなんてするから。

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