tender dragon Ⅱ

忘れられない自分に嫌気が差す。

忘れてしまえばいいのに、まだどこか期待してしまっている自分に腹が立つ。


「…希龍さんですか?」


やっぱりみんな気づいてるんだ。

あたしが急に来なくなった理由が希龍くんにあると分かっているから、無理に誘うことはなかった。

メールだって来てたけど、"戻ってこい"という内容は一件もなかった。それが寂しくもあったけど、それと同時にどこか安心していた。


「もしかして、これからずっと会わないつもりでいるんですか?」

会わないんじゃない。

あたしは会いたかった。だから何度も安田さんの家や希龍くんの家に行った。

あの日から一度も、希龍くんの顔を見ていない。連絡だって来ない。


「…会いたくても会えないんだもん」

想いはあたしの一方通行だったってこと。だから希龍くんからの連絡は来ないし、会いにも来てくれない。

「会えないのに安田さんの家に行って思い出すのは嫌なの…」


頑張っても、どうにもならない。

だったら忘れてしまえばいい。

みんなに会わないのは、安田さんの家に行かないのは、希龍くんを忘れるため。

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