tender dragon Ⅱ
傾いてしまった春斗の表情は分からない。
でも、きっと怒ってる。あたしはずっと、勝手なことばかり言ってるんだから。
「…だから、春斗ももう…あたしのことなんて気にしなくていいんだよ…」
顔を上げた春斗。
その表情は怒っているようには見えなかった。悲しそうで悔しそうで、今にも泣き出しそう。
「俺、親切心で美波さんのことを気にしてるわけじゃないですよ。」
どういう意味なんだろう。
春斗の考えていることがよく分からない。
「意味、分かりませんか?」
何も言わないあたしに春斗が問いかける。
意味なんて分かるわけない。春斗の考えてることが、あたしには全く分からないんだから。
「分かんない…」
一瞬。
ほんとに、一瞬だけ。
春斗があたしの目を見て泣きそうになって、そのあとすぐにいつもと同じ優しい笑顔に戻った。
「そうですよね…やっぱりいいです!」
「え?」
「何でもないんで、気にしないでください!」
何でもないわけない。どういう意味なのかちゃんと教えてくれなきゃ分からないよ。
「あ、そうだ美波さん」
わざと話を反らすように唐突に話題を振る。