tender dragon Ⅱ

春斗やタケくんが来たときよりも遥かに多い女の子の人数に驚いた。

これは、蒼空くんが西高の制服を着てるからじゃない。ここにいる女の子たちはこの人が誰か分かってるから。


…蒼空くんが誰に似てるのか気づいてるから。


「美波?」

「あ、ごめん…」

せめてもの救いは、喋るときの口調が彼ほど柔らかくないことだけ。


「何でメール返さないんだよ。」

歩き出してすぐ、蒼空くんは少し不機嫌そうにいった。

春斗が来た日、一通だけ来ていたメールは蒼空くんからだった。


【何で来ねぇの?】

返せるわけない。会いたくなかったから、だなんて言えるわけないんだから。


「……気がつかなくて」

こんな理由で納得してくれるわけないと分かってるけど、咄嗟に出た答えは小学生でも思い付くような簡単なこと。


「4日も前に送ったのに?」

ごもっとも。

こう言われれば、何も言えなくなる。だってそんなのありえないんだもん。

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