tender dragon Ⅱ
鍵は開けておいてくれるって言ってたし、わざわざ安田さんも葉太もいない日を選んだんだから。
―ガチャ…
「お邪魔しまーす…」
一応小声でそう言って、玄関に靴がないことを確認して家に入る。
思わず立ち止まってしまった。
春斗と一緒にカレーを作ったことや、安田さんと買い物に行ったこと。
蒼空くんに初めて会ったときのこと。
葉太に告白されたこと。
………希龍くんとキスしたこと。
やっぱりここに来ると全部思い出してしまう。楽しかったことも、悲しかったことも。
楽しかったことの方が圧倒的に多いけど、一番思い出したくないことが起こったのもこの場所だった。
…ここは、希龍くんを最後に見た場所。
彼との思い出がたくさん詰まった、大切な大切な、居場所だった。
「あ…、あったあった…」