tender dragon Ⅱ

やっぱりあまり長居したくないから、机の上に置いてあったカーディガンを手に取った。

カーディガンの上に置いてあったメモに、安田さんの字で書いてあった。


【いつでも帰ってきていいから。】


帰ってきていい、なんてまだ言ってくれるんだ。あたしが一番自分勝手なのに。


安田さんは大人で、優しくて、兄弟がいないあたしにとってはお兄ちゃんみたいな人。大切な人……どこまでも優しい。

あたしはたまたま希龍くんに助けてもらっただけなのに、みんなどうしてここまで?


カーディガンを持って、安田さんからのメモを見ながら呆然と立ち尽くしていたときだった。

微かに聞こえた足音。


「え…?」

ここには誰も来ないはずなのに。

だからわざわざ今日を選んでここに来たのに。


地面を踏み鳴らす足音は徐々に近づいてきていて、どうすればいいのか分からなくなった。

ドアの向こうにいるのは誰か分からないけど、今出ればきっと鉢合わせてしまう。

……なんて、思っている内に足音はこの家の前で止まって…

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