tender dragon Ⅱ
―ガチャ…
何の躊躇もなく、扉は開いた。
チャイムを鳴らさずに入ってこれるくらい、ここに慣れた人間だってことは分かってる。
だから見るのが怖かった。
「美波…?」
振り返れなかった。
振り返らなくたって、あたしの後ろに誰がいるのか声で分かってしまった。
久しぶりに聞いた。
「……あたし、すぐ帰るから…っ」
下を向いたまま振り返って、隣を通りすぎようとしたときだった。
「待てよ。」
「…離して、葉太…」
葉太はあたしの腕をつかんで離さない。
いつから会ってなかったんだろう。
久しぶりに会った葉太は以前よりも大人びていた。髪も伸びたし、背だって少し伸びた。
あたしの腕を掴む力は、だんだんと強まっていて、葉太が怒ってることがすぐに分かった。
「話がある。」
怒って当然。
いつも優しい葉太を怒らせるだけのことを、あたしはしてしまったんだ。