tender dragon Ⅱ
その狂羅が潰れた。
あたしを追う人間、狙う人間がいなくなった。
……守ってもらう必要も、なくなった。
毎日送り迎えをしてくれてた春斗は動けない。
芽衣にも迷惑をかけてる。
ここに連れてきてくれた希龍くんも、もうここにはいない。ここには帰ってこない。
それが何を意味するのか、もう分かってた。
新しい生活が始まる。
あたしにとっても、みんなにとっても。
「…大丈夫だよ、きっと帰ってくるから…!」
目に涙を溜めて言う。
こんな顔をさせてるのは、いつもあたし。
「うん…、そうだね」
もとに戻るだけ。
みんなと出会う前のあたしに戻るだけ。
あたしはただの女子高生。
でもみんなは違う。
"龍泉"っていう大きなグループに関わってる。それを支える人間ばかり。
誰も言わないだけ。
でもあたしは気づいてる。
…あたしがここにいる理由がなくなった。
ただそれだけ。