tender dragon Ⅱ
「泣くなって。」
ほんと、嫌な涙腺。
止まってほしいのに、止まらない。
悲しそうな顔の葉太がそっとあたしを抱き締めて、何度も何度も大丈夫だと呟く。
「こうやって抱き締めんのも、今日で最後だからさ。」
今日で最後。
「…ほんとに、最後。」
強く強く力を込められる。苦しいくらいに。
だから言わなくたって分かった。
葉太が、まだあたしを想ってくれてることが。無理矢理諦めようとしてくれてることが。
「葉太…」
ごめんね、って言おうとしたときだった。
―ガチャ…
ドアが開く音。
葉太のことに気をとられて、足音なんて全く聞こえなかった。
ゆっくり開くドアを、ただ呆然と眺めていた。
全く動けなかったのは、何となく嫌な予感がしていたから。
ドアに背を向けている葉太は、ドアが開いたことにすら気づいていない。
………どうして、嫌な予感は当たるんだろう。